ウイルスは脂質・タンパク質・糖タンパク質からできたエンベロープと呼ばれる膜で被われた「エンベロープウイルス」と、その膜に被われていない「ノンエンベロープウイルス」に分けられます。エタノールはこの膜にダメージを与え、膜が壊されたエンベロープウイルスはすぐに失活します。一方、膜のないノンエンベロープウイルスは比較的エタノールで失活しにくい特徴があります。新型コロナウイルスは、幸いエンベロープウイルスに属するため、アルコールによって容易に失活し感染性がなくなります。そのためSARSコロナウイルス,MERSコロナウイルスを含む多くのエンベロープウイルスは45%濃度以上のエタノール溶液で失活すると報告されています。一般的なエタノールの手指消毒液は70~80%濃度となっていますが、消毒効果の一方、エタノールは脱脂力が強く、角質層の細胞間脂質を壊すため、手荒れの原因にもなり得ます。そのため、長期戦が予想される新型コロナウィルスの感染予防のための手指消毒としては、手荒れ防止を考慮して50~60%濃度のエタノール溶液を使用することは適した方法だと考えられます。
さて、マスクも通過してしまうコロナウイルスの飛沫核(エアロゾル)による感染は,一般に感染者から2m以上離れることで防げると言われています。富山大学名誉教授白木公康先生の話では、これはウイルスを含む飛沫核は2m移動する間に乾燥し、ウイルスが感染性を失うためだそうです。しかしながら、湿度の高い密室では数分から30分程度、感染性が保持され空中に浮遊しているそうです。
・適正なアルコール濃度の消毒液による手指消毒
・人と接するときは2m以上の距離を取ること
・湿度が高い密室環境は避けること
適切な対策を行って、感染予防を行っていただけたら幸いです。
日東電化工業株式会社 ヘルスケア事業部
茂田 正和
※この文章は皮膚科専門医監修の元に執筆いたしました。
【参考文献】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のウイルス学的特徴と感染様式の考察(⽩⽊公康)/日本医事新報社
殺菌・抗ウイルス効果に及ぼすエタノール濃度の影響 (神明朱美)/Kamp G J. J Hosp Inf 2018